書評」カテゴリーアーカイブ

書評:OPTION B: 逆境、レジリエンス、そして喜び

https://www.amazon.co.jp/dp/453232159X

概要

「オプション A は もう 無理 な ん だ。 なら ば、 オプション B を とことん 使い 倒そ う じゃ ない か」。

48歳で夫を亡くした、フェイスブックのCOOシェリル・サンドバーグが記した本。人が死別の悲嘆をどのように扱うか、レジリエンスとは何かについて本人の体験を元に記載されている。

ポイント

私 たち は 人生 の ネガティブ な でき ごと を さまざま な 方法 で 処理 する うち に、 レジリエンス の 種まき を する。 心理 学者 の マーティン・セリグマン は、 人 が 失敗 や 挫折 に どの よう に し て 対処 する かを 長年 研究 し、「 3つ の P」 が 苦難 からの 立ち直り を 妨げる こと を 明らか に し た(* 2)。 すなわち 自責 化( Personalization: 自分 が 悪い の だ と 思う こと)、 普遍化( Pervasiveness: ある でき ごと が 人生 の すべて の 側面 に 影響 する と 思う こと)、 永続 化( Permanence: ある でき ごと の 余波 が いつ までも 続く と 思う こと) で ある。 簡単 に いう と、 3つ の P とは ヒット 曲 の『 すべて は サイコー!』 の 裏返し、「 すべて は サイテー!」 の 状態 で ある。「 この サイテー な でき ごと は 自分 の せい だ。 何もかも が サイテー だ。 この 先 ずっと サイテー だ」 という 考え が、 頭 の なか を ぐるぐる まわり 続ける の だ。   つらい でき ごと が「 自分 ひとり の せい では ない、 すべて では ない、 ずっと では ない」 こと に 気づけ ば、 子ども も 大人 も 立ち直り が 早く なる こと を、 多く の 研究 が 示し て いる。 ネガティブ な でき ごと を 自責 化、 普遍化、 永続 化 し ない 人 は、 うつ になり にくく、 状況 により よく 対処 できる ので ある.

自分に起きた悲劇とその感情が、自分のせいではなく、すべてではなく、永続ではないことを理解する。例えそう思えなくても、その時が来ると信じる。

職場 に 戻っ て 最初 の 数日 は、 頭 が もうろう と し て い た。 フェイス ブック の COO( 最高執行責任者) に なっ て 7 年 以上 に なる と いう のに、 何もかも に 戸惑い を 覚え た。 復帰 後 はじめて の 会議 では、 みんな 何 を 話し て いる の?   それ が いったい どう し た と いう の?   としか 考え られ なかっ た。 でも いっとき 議論 に 引き込ま れ、 ほんの 1 秒間、 もしか する と 0・5 秒間 だけ 忘れ て い られ た。 死 を 忘れ た。

人は悲嘆に暮れると、すべてが無価値に感じる。それでも、初めはごく限りない時間でも、何かに没頭した時、元の価値観を思い出すときがある。

苦しみ の 渦中 に ある とき は、 その 気持ち が 永遠 に 続く よう な 気 が する もの だ。 将来 の 自分 が どんな 気持ち に なる かを 予測 する「 感情 予測」 の 研究(* 13) により、 人 は ネガティブ な でき ごと の 影響 が、 実際 より 長く 続く と 予測 し がち な こと が わかっ て いる

人は苦しみの期間を長く予測しがちである。その「苦しみ」は「想像よりは」長く続かない。

「 もはや 自分 の 力 で 状況 を 変える こと が でき ない とき、 私 たち は 自分自身 が 変わる こと を 求め られる の だ」

耐え難く・避けられない苦痛に苛まれた時、最終的には、人の価値観は強制的に変更される。

悲劇 を 経験 し た 人 たち の コミュニティ に 加わる には、 新しい―― そして 往々 に し て うれしく ない―― アイデンティティ を 受け入れ ざる を 得 ない こと が 多い。 著作家 の アレン・ラッカー は 体 が 麻痺 状態 に なっ た とき の こと を、 こんな ふう に 話し て くれ た。「 はじめ は 車 イス の 人 たち と 一緒 に いる のが いや だっ た。 あの『 クラブ』 に 入る 気 に なれ なかっ た ん だ。 自分 が 外れ 者 なのは 自覚 し て い た けど、 外れ 者 仲間 に 加わる のは ごめん だっ た」。 彼 は 一夜 に し て 考え を 変え た わけ では ない。「 4、 5 年 かかっ た。 脳 細胞 を 1 個 ずつ 移植 し て いく よう に、 この 事態 を そろそろ と 受け入れる よう に なっ た」。 そうして 適応 する うち に、 自分 の 状況 を わかっ て くれる 人 たち と 親しく なっ て いっ た の だ。 思いがけない め っけ もの が あっ た そう だ。「 とにかく 愉快 なや つらなん だ。 あんなに 毒 の ある ユーモア、 聞い た こと が ない よ」。

うーむ・・・。

その 夜 遅く、 デーブ の 母 ポーラ と 弟 ロブ が 2 階 に 来 て、 片づけ を 終える のを 手伝っ て くれ た。 2 人 は デーブ の 父 メル が 亡くなっ た 16 年前 にも、 この わびしい 作業 を 経験 し て い た。 まさか デーブ の ため に 同じ こと を する なんて、 2 人 は 考え も し て い なかっ た。 私 たち は 現実離れ し た 感覚 に 打ちのめさ れ た。 デーブ が いつも 着 て い た すり 切れ た グレー の セーター を ポーラ が 掲げる と、 私 は 泣き崩れ て ポーラ に すがりつい た。「 こんな 思い を もう一度 する なんて、 どんなに つらい でしょ う ね。 どう やっ て 耐え て いる の?   いったい どう やっ て?」。 ポーラ は 答え た。「 私 は 死な なかっ た。 メル は 死に、 デーブ も 死ん だ けれど、 私 は 生き て いる。 これから も 生き て いく わ」。 そして 私 の 肩 に 腕 を まわし て いっ た。「 あなた も 生き て いく の」。 続く 一言 に、 私 は 動転 し て しまっ た。「 ただ 生き て いく だけ じゃ ない、 いつ の 日 か 再婚 する のよ―― 私 も 祝福 に 駆けつける わね」。

このあたりの感覚については、やはり計り知れないものがある。

アレン・ラッカー も、 自身 の 麻痺 の こと を こう 書い て いる。「 あれ を『 別 の かたち の 幸運』 だ なんて、 気色 悪い 呼び 方 を し たく ない。 幸運 でも ない し、 別 の かたち でも ない。 だが、 失わ れる もの も あれ ば、 得 られる もの も ある。 そして とき には、 得 られる もの が、 やむを得ず 失わ れる もの と 同じ くらいか、 もっと 大きい こと も ある かも しれ ない

最終的に価値観の問題ではあるが・・。

感想

Option Bというタイトルそのものに救いがないような気がしてならない。実際、救いなんてものはないけれど、苦しみが永遠と続くわけでもないというべきか。「幸福」と「幸福を感じること」は異なるのかな。なんだか難しい。どんなときも自己の価値観を変革していけばよいということではある。不幸を受け入れ、常により良い物を求めるという姿勢なのかな。