こんにちは、ねんどです。
今回は拙作ローグライクの完成のまとめを兼ねて、Roguelike Advent Calender にて考えたことの共有を行いたいと思います。
ローグライクを自作するとなると、つい他と違うゲームシステムを盛り込みたくなりますが、エッセンスとなる要素まで削ってしまったり、相性の悪いシステムを盛り込んでしまうことってありますよね。本記事では私がやってみてうまくいかなかったと感じたアイデアを集めてみました。
本件で取り扱う「ローグライク」はチュンソフト派生のものがメインターゲットで、ASCII の古典的なローグライクに関しても画面表示を除く一部内容が被りますが、今どきのいわゆる「ローグライクジャンル」はスコープ外になります。
斜め移動をなくす
ローグライクでは当たり前のように実装されている斜め移動ですが、意外と重要です。実装する側から見ると、
- 斜め移動に関して独自の操作系を用意する必要がある
- AIの探索ルーチンなどに影響する
上記の点から、上下左右の移動に限るという選択肢も出てきます。実際に他ジャンルで斜め移動を定義してるものってあまりないですよね。SRPGやRPGの移動などタイルを用いた移動を定義するゲームはほぼ上下左右のみだと思います。それはその方が純粋に実装としてシンプルだからです。
しかし、ローグライクで斜め移動を削るとコレジャナイ感が出てきます。その理由は「選択肢が狭まる」ことだと思います。敵から逃げる場合はもちろん、アイテムを活用できる方向が8から4に減れば、その分選択肢の広がりが小さくなってしまいます。
「選択肢が狭まる」と、発生したゲーム場面に対しての解答を繰り返すローグライクというジャンルにおいてはそれが致命傷になりえます。考えられた戦略がないなら、まずは実装して然るべき機能の一つです。
クォータービュー
これは SRPG だと定番ですし、少ない素材でマップ表現を豊かにしようと考えたときには盛り込みたい仕様で、また設計時には相性がとても良いように思えます。ただ、個人的にはローグライクとの相性があまりよくないと感じています。
問題は、上述の斜め移動を用いる操作系との相性がよくないことです。クォータービューで上下左右ボタンを押下した際に想定されるキャラクターの移動方向は斜め方法になると思いますが、ローグライクでは斜め移動が許容されているので、とてもチグハグな操作系になってしまいます。一歩の動きが致命傷となることがあり、繰り返しを前提とするゲーム性の上で操作感が安定しないのは問題です。
ダンジョン内の分岐を増やす
実際に NetHack 派生のローグライクには様々な分岐がありますので、一概に問題というわけではないですが、ここで対象としているのは、AルートとBルートが有り、どちらの道を進んでも良く、かつ片側しか選べないというような仕様についてです。字面だけだと伝わりにくいかもしれませんが、意外と?やりがちだと思います。
どんなゲームでも言えることですが、遊ばれないコンテンツを作り込むことはあまり得策ではないです。ルート分岐を作ればその分ダンジョン全体で体験が増すように思いますが、実際のプレイで片側しか通れない場合はその分の価値が無駄になっていると言えます。
先述した NetHack でも、アイテム収集の関係で基本的にはすべてのルートを周回することになりますので、実際には無駄が生じにくくなっています。もちろんこの話は全体で投入できる工数兼ね合いの側面も強いのですが、あまり優先すべき仕様でないことは確かだと思います。
部屋を作らない
ローグライクを作ってみると疑問に思う仕様の一つに「部屋」があります。部屋とは下記のような概念です。
- 部屋は通路とは異なる独自の視界を定義する
- 部屋を出入りすると、魔物が起きるなどのイベントが発生する
恐らく元となったローグから受け継がれている仕様のように思います。これを実装都合で考えてみると、実際のマップ空間にゲームデザイン都合の「部屋」を重ねて定義する必要があり、煩雑でわかり難い仕様です。実際にこれを取り除いた実装も、もしかしたらあるかもしれません。少なくとも直感的に削りたくなる仕様だと思います。
しかし、わざわざこれを実装しているという部分にやはり意図が隠されています。「部屋」のメリットは、この仕様を用意するだけで「小さなパズル」がポコポコと生まれ、ゲーム体験に抑揚が生まれる点だと思います。
ローグライクというジャンルは、リソース管理と要所で生まれた問題に対するコストのトレードオフを考えていくゲームだと言えますが、発生する問題は理不尽ではないほうがよく、対処を考えられる必要があります。矛盾じみた要求ですが、「部屋」はまさにこの問題を解決するとても優れたデザインであると言えます。
この「対処可能な問題」を生み出していくことは、ローグライクのデザインで重要なポイントだと思います。同様に「罠」や「モンスターハウス」などの仕様もこの体験を強化していくための観点の一つであり、見落とされがちですが、とても重要な仕様・ゲームデザインです。
「不思議のダンジョン」並のビジュアル
「不思議のダンジョン」のドット絵ないしキャラクター表現は他ジャンルと比べてもかなり大規模な部類で、必要な画像素材を簡便に記載すると、下記が必要です。
- 全キャラクターの8方向アニメーション
- 静止、移動、攻撃、食らいモーションなど
- 周囲の状態に応じて変化する多様なマップチップ
- エフェクト類
もちろんジャンルに応じてそれぞれ特質はあると思いますが、リソースが比較的少なめで済む STG や ACT はもとより、RPG などに比べても比類ない量の画像リソースが必要になると個人的には思っています。問題は作る側がこれを認識していないケースです。
FF などに比べてチュンソフト派生のローグライクが「美麗グラフィック」というようなイメージを持たれることはあまりに無いように思いますが、実際はベクトルが異なるだけで同様の性質があります。これを認識せずに同じものを作ろうとすると相当に大変です。
実際にフリゲや個人制作の作品を並べてみました。
- Elona:タイルUI
- ディアボロの大冒険:ほぼチュンソフト並(すごい)
- ナナカ: ほぼチュンソフト並(すごい)
- だんえた2: 主人公だけ作り込み有。敵ドットは正面向きの静止モーションのみ
- Tangledeep:主人公だけ作り込み有。敵ドットは一方向の静止モーションのみ
…こうしてみると頑張っている作品が多いですね、敵キャラクターなどはある種の妥協が効くことはあるのかもしれません。とはいえ大量のリソースが必要なのは変わらないです。
個人的には Tangledeep のような形は一つの定番なのかなと感じています。また主人公の8方向作り込みは、しない場合に向いている方向がそのままでは伝えられないという問題があるため、頑張りどころだと思います。
レベルをなくす
レベル(経験値)のないローグライクを実装したことがある・実装しようと思う人がどのくらいいるかという話はありますが…個人的にはあまりうまく行きませんでした。
仕様を削るようにデザインすると、レベルは単なるインフレ要因のように思えてくる事があると思います(ない?)。実際にはリソース管理の側面で重要なポイントとなっていて、プレイ感に大きな影響を与えています。
レベルが生み出しているのは「レベルがいくつであれば、コストがいくつで敵を倒すことができ、経験値をいくつ回収できる」という判断の連鎖です。これはローグライクで最も基本的なメカニズムであり、面白さの根源となっていると思います。
おわりに
尻切れトンボでスミマセンが、本記事の内容は以上です。ニッチジャンルの更にニッチを攻めるような内容で、誰が対象かわかりませんが楽しんで頂けたら幸いです。私としては、基本的に既存のシステムってやっぱりすごいんだなぁという感想。
悪いアイデアについては、まだ色々とあったように思うので思い出したら追加したいと思います。他にたぶんダメそーなアイデアだったり、逆に必ず入れるべき仕様なども書き足したいところでしたが、気合が入りすぎなのでやめました。もし他のローグライク製作者様がいらっしゃいましたら、意見の交換などもできたらなぁ…と思います。それではまた。